今回のテーマは『がんの薬物療法』です。がんの薬物療法とは、抗がん薬、ホルモン療法、免疫賦活剤などを使う化学療法のことです。
今回も看護実習の事前事後学習に活かせるように簡単にまとめました。
では、いきましょう、『がんの薬物療法』!!
がんに効く様々な薬剤
・アルキル化薬という、抗がん薬(シクロホスファミドなど)は、細胞の遺伝子(DNA)に余分なものを付け、分裂が出来ないようにする
・シスプラチンは白金製剤という種類で、これも細胞の遺伝子に余計なものをくっつけて分裂できなくしてしまう、アルキル化薬の一種
・代謝拮抗薬(メトトレキサートなど)が代表的な薬で、これは遺伝子の「ニセの材料」 根拠:細胞が分裂するためには材料が必要で、その材料は血液に乗って運ばれ、細胞の中に取り込まれ遺伝子の原料として利用される。代謝拮抗薬は、この遺伝子の原料によく似ている材料であって本物ではないので、遺伝子を作れない為、効果があるとされる。
・エトポシドは植物アルカロイド薬の一種で、これは細胞分裂に必要な細胞内の器官の分裂を邪魔をする働きがある
・インターフェロン療法👉こちら C型肝炎にも用いられている。がん細胞は身体にとって、異物とみなされるためTリンパ球などの免疫細胞によって破壊することができる。この免疫機能を、インターフェロンによってさらに活性化させる方法。免疫療法ともいう。
・インターフェロンが適応となるがんは、肝がん、腎がん、血液の悪性腫瘍等、いくつかのみに限られる
・分子標的治療薬は、悪性腫瘍に存在する分子生物的な特徴に対応する分子をターゲットにした薬剤
抗がん薬と比較すると、骨髄抑制や脱毛などの毒性は低いとされる 根拠:がん細胞に対して、選択的・特異的に効果を発揮する。つまり、標的分子を持っていない正常細胞には理論上作用しないため。
ただし、皮膚障害、心筋障害、高血圧、インフュージョン・リアクション(過敏反応)など、分子標的治療特有の副作用は多岐にわたる
抗がん薬の副作用
(1)骨髄抑制(国試)
・骨髄抑制とは、骨髄の造血細胞が障害され白血球数が減少(汎血球減少)することにより身体の免疫が弱まり、感染症にかかりやすくなる状態
・骨髄抑制は、化学療法においてほぼ必発の有害事象
・血球の全てが減少する汎血球減少が起こる 根拠:抗がん薬には正常細胞の分化・増殖を障害するという副作用があり、このため骨髄中の造血幹細胞の血球生産機能が障害され、血球数が正常より低下するため
・好中球の減少による感染症
・血小板の減少による出血
・赤血球の減少による貧血→心不全状態
(2)細胞分裂が活発な組織ほど抗がん薬の影響を受ける
・抗がん薬の多くは細胞分裂が活発な組織に作用しやすい
・細胞分裂が活発な組織が抗がん薬の影響を受けやすい
●抗がん薬による主な副作用の発現時期(国試)
・投与日:アレルギー反応、血管痛、発熱、悪心・嘔吐、循環器症状(血圧低下、頻脈、不整脈)
・2~7日:疲れやすい、だるい、食欲不振、悪心・嘔吐、下痢
・7~14日:口内炎、食欲不振、下痢、胃もたれ、骨髄抑制(貧血、白血球減少、血小板減少)
・14~28日:脱毛、皮膚の角化やしみ、手足のしびれ、膀胱炎
・消化管粘膜も代謝スピードが速く、吐き気や下痢が発生しやすい 根拠:消化管粘膜の細胞が抗がん薬の影響を受けやすいため
抗がん薬投与による血球の減少時期と症状
●白血球
・減少時期:最低値になるのは投与開始後7~14日が多い
・症状:易感染状態
●血小板
・減少時期:抗がん薬投与開始から1週間頃から減少し始め、2~3週間で最低値となることが多い
・症状:出血傾向
●赤血球
・減少時期:2~4か月後が多い
・症状:造血幹細胞の障害による赤血球生産減少のほか、血小板減少に伴う出血により、貧血が発生することもある
骨髄抑制のある患者の看護
●マスクの着用、含嗽、手洗いなどの励行 根拠:血球の減少で易感染状態であるため、マスクは保湿効果があるため
●口内炎の予防として口腔内の清潔も重要 根拠:うがいは感染予防以外に口内炎などの口腔粘膜障害や二次感染の予防にもつながる
抗がん薬の副作用への看護
●悪心・嘔吐:制吐薬、補液、食べれるものを食べる。悪心・嘔吐を誘発しない環境作り、リラクゼーション法など
●脱毛:脱毛前の頭髪の処理、かつらの使用
●骨髄抑制:免疫細胞の刺激因子投与、手洗い、含嗽、マスクの着用などの感染症予防、個室隔離、転倒予防
●口内炎:食事形態の工夫、歯ブラシの変更、適切な含嗽薬による消毒、疼痛緩和
●食欲不振・味覚障害:食事献立の工夫、口腔内ケア、口腔内保湿(唾液スプレーなど)
●倦怠感:心理的介入、安静
●末梢神経障害:薬物療法、障害部位の保湿、転倒、熱傷などの予防
●便秘・下痢:薬物療法、排便習慣の調節、十分な補液
血管外漏出
・抗がん薬が血管から漏れ出すこと
・潰瘍や壊死を起こすことがある
・血管外漏出には、静脈穿刺針周囲からの漏出と、穿刺針周囲の血管突破による漏出がある
・患者へ、血管外漏出の可能性をよく説明し、少しでも痛みや違和感を感じたらすぐに知らせるよう、あらかじめ説明する 根拠:患者の抗がん薬投与に関する不安を少しでも和らげるため
・抗がん薬投与中は、刺入部の観察だけではなく、輸液ボトルの輸液の量や、バイタルサインなどの観察の実施
●血管外漏出の徴候
・発赤、腫脹
・灼熱感や痛み
・滴下が遅くなる、止まる
・皮膚の異常(水泡が出来る、硬くなる等)2、3日~数日後
・潰瘍、壊死(週数間後)
血管外漏出時の看護
・直ちに注入を中止し、医師へ報告して炎症を抑える処置を実施する
・穿刺針に注射器をつけて漏出した液体を吸引してから穿刺針を抜去する
・静脈炎、皮膚炎、皮下脂肪組織炎などの急性の炎症がみられた場合は、①患肢の挙上、②ステロイド軟膏外用薬を広範囲に塗布、③その上に0.1%アクリノール液の冷湿布を塗布することが推奨されている
抗がん薬の取り扱い
・調剤はデリケートで危険を伴う作業のため、安全な環境を整える 根拠:飛沫やはねなどで皮膚や目に付着したり、エアロゾルを吸入するリスクがあるため
・皮膚についた場合は流水・石鹸で洗浄する
・床にこぼれた場合は周囲側から中心にむかって拭き取る 根拠:外側に向かい拭くと広がるため
今回はがんの薬物療法についてでした。
では、また!!
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