今回のテーマは『輸血』。看護実習では、輸血見学やその看護を学ぶことがあると思います。今回も、根拠を踏まえ簡単にまとめました。
この記事をそのまま、活用して看護の事前・事後学習に生かしてください。
では、行きましょう『輸血』!!
血液製剤とは?
・血液製剤は全血製剤と成分製剤とに分けられ、成分輸血が中心となって行われている。
・成分製剤とは血液から赤血球、血小板、血漿などの成分を分離して調整を加えたもので、主なものに赤血球液(RBC)、濃厚血小板(PC)、新鮮凍結血漿(FFP)などがある。
赤血球液(RBC)
・血液から血漿と白血球の大部分を除去し、保存用添加液(MAP液)を混和したもの。
・重度の貧血など赤血球の不足の際に用いられる。
・2~6℃で保存。
・有効期間:採血後21日間
濃厚血小(PC)
・血液から血小板を取り出したもの。
・血小板減少を伴う疾患に用いられる。
・20~24℃で振盪しながら保存 根拠:血小板は長時間そのままにすると、pHが低下し、凝固能が低下してしまうため、20~24℃の温度を保たせ静かに振盪(揺らす)させる必要がある。
・有効期間:採血後4日間
新鮮凍結血漿(FFP)
・血液から血漿部分を取り出し-20℃以下で冷凍保存したもの。(国試)
・血液凝固因子の補充に用いられる。
・有効期間:採血後1年間
血漿分画製剤
・血漿に含まれるたんぱく質のうち、特に重要なものを血漿から取り出して生成したものを、血漿分画製剤という。
・主なものに、アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、血液凝固因子製剤などがある。
血液型不適合輸血の危険
溶血のリスク
・血液型不適合輸血の危険 血液型の異なる血液を輸血すると急激な溶血が起こる。
・溶血とは、赤血球が破壊されヘモグロビンが遊離すること。
・ABO型式血液型不適合輸血による急性溶血は通常、輸血後10分以内に発生することから、最初の10~15分間は1mL /分とゆっくりとしたスピードで開始し要観察する。
血液型不適合輸血の症状
・輸血中に血管に沿って熱感の出現、顔面の紅潮、息苦しさを訴えた場合は即輸血中止。
・ただし手術中は麻酔のため意識が無いため、ミスがあれば致命的となる。
・症状として冷汗、嘔吐、腹部疼痛、悪寒・戦慄、血圧低下、頻脈、ヘモグロビン尿が出現。
輸血確認の手順
①看護師(Drの場合もあり)と輸血部との確認
・輸血部職員と受け取りに行ったスタッフが以下の確認を実施
・患者氏名、生年月日、患者ID、病棟、血液型、輸血使用日、輸血の種類、量(単位)、血液製造番号、有効期限、放射線照射の有無、交差適合試験票、血液バッグ本体、添付伝票 を照合し、双方が交互に声に出して読み、患者本人のものに間違いないことを確認する。
②手術部などで使用する場
・①で受け取ったスタッフが血液を手術部に運び、手術部の患者担当看護師とともに①と同じ項目を同じように確認する。
③輸血セット接続前の確認
・カルテの血液型を確認しながら①と同じ項目を担当看護師、医師で同じように声を出して確認する(ダブルチェック)。
・血液バッグ本体に担当看護師と医師の双方がサインしたシール(伝票)を貼付する。
④実施直前の確認
・(患者の意識がある場合は)患者本人にも確認の必要性を説明し、名前、生年月日、血液型を言ってもらう。
・患者の手首などに付けているネームバンドで、患者氏名、生年月日、患者ID、血液型を確認する。
・副作用の症状が出たらナースコールを押すように伝える。
⑤輸血後の確認
・開始後10~15分は1mL/分、それ以降は5mL /分で滴下する 根拠:ABO型式血液型不適合輸血による急性溶血は通常、輸血後10分以内に発生するため。
・開始後5分間はベッドサイドで観察し、15分後、輸血終了時にそれぞれのバイタルサインのチェックと副作用の有無を観察、記録する。
交差適合試験とは
・交差適合試験とは、用意された輸血用血液が、その患者に使用できるか、調べる方法。
・英語ではクロスマッチという。
試験方法
①患者に輸血予定の血液の一部(セグメントチューブ)と、患者の血液をそれぞれ放置
②それぞれ放置すると、血球(赤く不透明な部分)と血清(やや黄色がかった透明な部分)に分離する
③それぞれの血球のほうを生理食塩水1mlに垂らし、血球浮遊物を作る
④次に、患者の血清に輸血用血液の血球浮遊液を垂らす=主試験 根拠:患者の血清と輸血用血液の血球浮遊液を混ぜ、異常が起こらないことを確認するため
⑤今度は逆に、輸液用血液の血清に患者の血球浮遊液を垂らす=副試験 根拠:主試験同様、異常が起こらないことを確認するため
・この試験結果を医師や看護師複数名で確認する(国試)
LR(Leukocytes Reduced)
・輸血用血液バッグに「LR」と記載されている。
・LR(Leukocytes Reduced)とは、放射線によって白血球を減らす処置済であるということ。 根拠:放射線を照射せずに使用した場合、副作用が出るリスクが高くなるため。
輸血後GVHD
・輸血後GVHDとは供血者のリンパ球が排除されず、逆に受血者の組織を次々と攻撃してしまう病態。
・輸血後GVHD=移植片対宿主病は、輸血後1~2週間後に、まれに発症する。発症すると死亡率はほぼ100%。
・輸血後1~2週間で全身が真っ赤になり、下痢や下血などの症状がみられる。
・通常、人間の身体に異物が入ると、敵とみなし排除しようとする機構が働くが、これにはTリンパ球という白血球の一種が関与している。
・放射線の照射を行うことで、リンパ球はそれ以上増殖しなくなるため、輸血後GVHDはほぼ防ぐことは出来る ※ガイドラインに定められている。
・新鮮凍結血漿以外のすべての輸血用血液に放射線照射を実施する。 根拠:新鮮凍結血漿ではリンパ球の混入が考えにくいため。
・医療用放射線の単位にはGy(グレイ)が用いられる。(国試)
・放射線照射は15~50Gyの範囲で行う。
・新生児や腎機能が低下している人には避ける必要がある。
輸血中の観察項目
・輸血後10分以内に起こる、アナフィラキシーショックのリスクがあるため、特に輸血開始後5分間は目を離してはいけない。
・異常があればすぐに輸血を中止し報告する。
・15分後も確認のためもう一度チェックする。
・アナフィラキシーショックが疑われる場合は、アドレナリン0.3mgの筋肉内注射が行われる
輸血時の観察ポイント
・アレルギー症状(発熱、蕁麻疹、皮膚紅潮など)の有無。
・血圧・呼吸・頻脈、チアノーゼなどのバイタルサインの異常は無いか。
・ショック症状の有無。
・全身を観察し、異常があれば輸血を中止し報告する。
まとめ
今回は「輸血」についてでした。
では、また!!
輸血の手順について理解と、その根拠をしることができれば、実習を乗り越えれるはずです!!
コメント