術前の看護(手術前日)事前学習のポイント・書き方10選 根拠付 

周手術期の看護

今回のテーマは『周手術期 術前の看護 手術前日Ver.』。この『術前の看護』は看護実習で絶対に学ぶ事、間違い無し!!

なので、事前学習・事後学習で提出もほぼ必須だと思います。この記事をそのまま活用してもらって、少しでも実習中の睡眠時間を稼いで貰ったら嬉しいです

では、いきましょう『周手術期 術前の看護 手術前日Ver.』!!

術前の患者への関わり方

・患者は手術前日までに、主治医執刀医麻酔科医などに説明を受ける。そのため看護師は、多くの情報を正しく理解できているか疑問は無いかを確認し、必要時は補足説明等を実施する。

・手術前日の患者は「手術が上手くいくか?」「手術ではどんなことをするのか?」など様々な不安を抱いている。そのため看護師は、個室など患者が話やすい環境を整え傾聴する時間を設けることが必要。 根拠:患者の不安軽減のため。

・手術に必要な準備服薬・飲食の制限や必要物品の準備等)を確認する。

・手術中の待機場所など、家族に対するケアの実施。 根拠:家族も患者同様不安を抱いているため。

※術前の看護について別記事は下の画像をクリック👇

術前日の患者の観察項目

手術前日の患者の状態

・術前の検査や処置、緩下剤の内服などで疲労感や、手術の緊張不安が強い状態である。

術前のフィジカルアセスメント

観察ポイント

・皮膚、顔色、体温、脈拍、呼吸回数、呼吸音、血圧、SpO₂、

・腹部の状態、腸蠕動音、歩行状態、

・腎機能、肝機能、栄養状態、血液凝固状態

・既往歴、血液検査データ、X線写真、心電図、使用中の薬剤

●ケアのポイント

・使用中の薬剤をどの程度、自己管理できていたかを確認する。

経過観察のポイント

・術前の情報収集、アセスメントを行い、手術が安全に受けられる状態か判断する。 根拠:術後に異変が生じた際、術前の状態と比較するため情報収集は重要

術後感染を防ぐために

●観察ポイント

・皮膚や爪の汚れ、術野周囲の体毛、排便状況、栄養状態、血液検査データ(血清総タンパク[TP]、アルブミン[Alb]、赤血球数[RBC]、ヘモグロビン[Hb]、ヘマトクリット値[Ht])

●ケアのポイント

・入浴、シャワー浴、清拭などで全身の清潔を保つ。 根拠:術後感染のリスク軽減のため

・創部にかかる場合は、臍処置と除毛の実施。 根拠:術後感染のリスク軽減のため

緩下薬内服の説明をする。 根拠:排泄ケアも、術後感染のリスク軽減のため

呼吸器合併症を防ぐために

●観察ポイント

・呼吸回数、呼吸のリズム、呼吸音、SpO₂、血液ガス検査、胸部X線写真、呼吸機能検査(スパイロメトリー)、喫煙状況

●ケアのポイント

インセンティブスパイロメトリー排痰法の説明の実施。 根拠:呼吸器合併症のリスクを減らすため、患者が継続して呼吸訓練ができるようにする

・喫煙者には禁煙の説明をする。

深部静脈血栓症を防ぐために

●観察ポイント

・既往歴、血液検査データ(D‐ダイマー、プロトロンビン時間[PT]、出血時間、活性化部分トロンボプラスチン時間[APTT]、へパプラスチンテスト[HPT]、血小板数[PLT])下肢の周囲径・皮膚の色

●ケアのポイント

・下肢のサイズを測定して適したサイズの弾性ストッキングを準備する。 根拠:ストッキングのサイズが不適合な場合、適切な圧がかからないため。また、サイズが小さすぎると褥瘡や皮膚損傷につながる。

術後合併症予防の為の早期離床

●観察ポイント

・術前のADLのレベル

●ケアのポイント

・術後創部がどこにできるか予測し、創部の負担を軽減できる方法や動作を説明し練習する。 根拠:疼痛を軽減することで、積極的な早期離床につながるため。

術後出血を防ぐため

●観察ポイント

・血液検査データ(D‐ダイマー、プロトロンビン時間[PT]、出血時間、活性化部分トロンボプラスチン時間[APTT]、へパプラスチンテスト[HPT]、血小板数[PLT]、赤血球数[RBC]、ヘモグロビン[Hb]、ヘマトクリット値[Ht])

●ケアのポイント

抗凝固薬が術前に中止されているかの確認。 根拠:抗凝固薬を内服していた場合は術後出血のリスクが高くなるため。

不安の軽減のサポート

●観察ポイント

不安の徴候普段と異なる言動。 根拠:不安は不眠の原因だけでなく、交感神経を優位にし、周術期のバイタルサインに影響を及ぼす。

●ケアのポイント

・患者が不安を表出しやすいように環境を整え、傾聴する。

手術前日までに用意するもの

患者が準備するもの

●腹帯

創部保護のために用意する。

●T字帯

・下着のように上げ下げすることなくヒモを外すだけで着脱ができる。

・着脱が簡単なため、一般的な下着より着脱時に痛みが生じにくく創部を観察しやすい

●吸い込み

寝た状態でもうがいや飲水がしやすい。 根拠:創痛や術後安静のため患者は起き上がれないことが多いため。

●ティッシュペーパー

・全身麻酔での手術の場合に、術後は気道内分泌物の増加によってがでやすくなるため。

病棟から手術室へ持参する物品

・カルテ、IDカードなど

・各種検査データ、心電図

・手術承諾書、手術室入室前チェックリスト

・レントゲンデータ(フィルム)

※病棟から手術室へ持参する物品は実習先により違うので看護師に確認する。

皮膚の清潔

・術前日にはシャワー浴の実施。

・手術部位の周囲に体毛がある場合には短く切る。

・臍の周囲を切開する手術の場合には臍垢を除去する。

を短くする。

根拠:皮膚や体毛、臍に存在する微生物を減少させ、術中および術後感染を予防する。

消化管のプレパレーション

・あらかじめ手術前に腸管の内容物を排出させる。 根拠:手術中に麻酔の筋弛緩作用により肛門が緩み、便が排出され手術環境が汚染されるのを防ぐため。

・手術前日から飲食を制限したり、薬剤(経口腸管洗浄剤)により強制的に腸管の内容物を排出させる。

術前に使用する経口腸管洗浄剤

ニフレック

・1袋(約137g)を水に溶解し2Lとし、溶解液を内服する。

・通常、成人には1回溶解液2~4Lを1時間あたり約1Lの速度で経口投与する。排泄液が透明になった時点で投与を終了する。

マグコロール

・1袋を(50g)を水に溶解し180mLとする。

・手術開始予定時間の10~15時間前に経口投与する。

弾性ストッキングについて

・弾性ストッキング着用の目的は、深部静脈血栓症を予防するために弾性ストッキングを着用する。 根拠:術中から術後にかけて、長時間の同一体位や安静などにより、下肢に深部静脈血栓症が発生しやすくなるため。

弾性ストッキングの種類

ハイソックス(膝丈)タイプとストッキング(大腿丈)タイプがあり、つま先には検査穴(インスペクションホール)がある。

・日本ではハイソックスタイプの着用を推奨されている。

弾性ストッキングの採寸方法

大腿上部の周囲径(太さ)を測る。周囲径が63.5㎝以上の場合は、大腿部への食い込みが強くなるため、ハイソックスタイプを選択。

腓腹部(ふくらはぎ)の周囲径を測る。

踵から足の付け根までを測定し、弾性ストッキングを選択する。 根拠:ストッキングのサイズが不適合な場合、適切な圧がかからないため。また、サイズが小さすぎると褥瘡や皮膚損傷につながる。

※採寸した数字をもとに適切なストッキングを準備する。採寸方法はブランドにより異なるため、取説は要確認する。

呼吸訓練について

・術後は、痰などの気道内分泌物を排出しにくい状態となる。 根拠:術後は、創部により呼吸運動や咳嗽運動が抑制されるため

1回換気量の減少が生じる。👉1回換気量のリンクこちら 根拠:創痛により体動が減少し、仰臥位などの同一体位をとり続けることが多くなり、仰臥位では腹腔内臓器に押されて横隔膜運動が抑制されるため。

・術後呼吸器合併症(主に無呼吸)を予防するために、術前からインセンティブスパイロメトリーによる呼吸訓練の実施、口すぼめ呼吸深呼吸ハフィングの練習を行う。👉『呼吸器疾患の基本』の記事こちら

身体的・精神的な安定と休息

照明空調などの休息のとりやすい環境にする。

・不眠時には睡眠薬の使用を主治医と検討する。

不安緊張がないか観察し、患者の話を傾聴する 根拠:不安や不眠は交感神経を優位にする。不安や不眠によって血圧が高かったり、脈拍が速い場合、麻酔の導入・維持管理が困難になり、使用する麻酔薬や鎮痛薬の量も多くなり術後の回復遅延につながる。

禁飲食の説明について

・禁飲食の目的開始時間を説明する。 根拠:術中は全身麻酔や気管内挿管の刺激によって嘔吐しやすい状態となるため。

・説明は書面も活用し、患者が忘れないようにする。

・手術直前まで禁飲食が守れているか観察や確認をする。

内服薬の確認

術中に影響のリスクのある内服薬

●抗凝固薬

・抗凝固薬は、凝固作用を低下させるため術中や術後に出血量が増加する可能性がある。

●ジキタリス製剤

・ジキタリス製剤は、術中に輸液などで血液が希釈されることで、安全域から外れて不整脈が出現する可能性が高い。

●β遮断薬

・術前にβ遮断薬の使用を中断すると、薬剤の効果が切れ手術中の心拍数増加血圧上昇のリスクがある。

●ACE阻害薬、ARB

・術前にACE阻害薬やARBを使用中の場合、術中や術後にも薬剤の効果が出現してしまい、血圧低下腎機能低下を起こす可能性がある。

●副腎皮質ステロイド薬

・通常、手術侵襲があると副腎皮質から副腎皮質ホルモンが分泌され、血圧を上昇させたり炎症を抑制するはたらきをする。しかし、副腎皮質ステロイドを長時間使用していると手術侵襲があっても副腎皮質や副腎皮質ホルモンが十分分泌されずに、血圧低下けいれんなどの症状を起こすことがある。

●降圧利尿薬

・術前に降圧利尿薬を使用していた場合、術中や術後にも薬剤の効果が出現して、術中の低血圧や術後の脱水低カリウム血症などが出現する可能性がある。

今回のテーマは『周手術期 術前の看護 手術前日Ver』でした。

是非、看護実習に生かして下さい。

では、また!!!

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