今回のテーマは『1型糖尿病』。1型糖尿病の病態から、インスリンの役割や看護のポイントを根拠も知り、理解できるようにまとめました。
血糖測定やインスリン自己注射の注意点も入っています。
では、いきましょう『1型糖尿病』!!
1型糖尿病とは
・1型糖尿病とは、インスリン分泌そのものが高度に低下してしまう病気で、小児~青年期に多く発症する
・1型糖尿病の患者の多くは、特定のタイプのHLA(個体ごとに異なる固有のタンパク質、免疫系は、HLAによって自己を認識している)をもっていることがわかっている
・このHLAをもつ人に、ウイルス感染などの因子が働くと免疫系に異常が起き、自分の膵臓β細胞を攻撃(自己免疫反応)し始める。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)の合併症としても知られている。
・免疫異常を反映し、膵島細胞成分に対する自己抗体が検出されることが多いため、この自己抗体が1型糖尿病の発症予知マーカーとして使われる
・β細胞が約80%破壊されると1型糖尿病を発症すると考えられている。1型糖尿病の多くは自己免疫疾患である。
・1型糖尿病では、インスリン分泌が低下するので、最終的に糖の取り込みがほぼ完全にできなくなり、生存するためにはインスリン注射が必須となる
(1)糖尿病の特徴
・糖尿病の特徴は、血液中のブドウ糖の値(血糖値)が高い状態が続くこと
・発症機序によって、3つの種類に分類できる
(2)糖尿病の分類
①1型糖尿病:自己免疫によるもの、特発性(原因不明)
②2型糖尿病:インスリン分泌の低下、インスリン抵抗性がさまざまな程度で関わるもの
③その他の特定の機序、疾患によるもの:遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの、ほかの疾患・条件に伴うもの
インスリンの役割
・1型糖尿病ではインスリン療法を実施するしかない 根拠:1型糖尿病はインスリンというホルモンが欠乏あるいは全く分泌されないため
(1)インスリンの働き
・インスリンは膵臓から分泌され、細胞への糖の取り込みを促すホルモンで、血糖を下げる唯一のホルモン
・糖をグリコーゲンに変えて肝臓や筋肉に貯蔵する
・糖を脂肪に変えて脂肪細胞に貯蔵する
・インスリンは血糖値を下げるホルモン 根拠:インスリンは、ブドウ糖を破壊してしまう訳ではなく、インスリンには血液中のブドウ糖を細胞内に取り込ませる働きがあり、その結果として血糖値が低下する
(2)ブドウ糖とインスリンの関係
・ブドウ糖は生体に必要不可欠なエネルギー源で、食物から摂取される
・食事により血糖値が過剰に上昇すると、インスリンが膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌される
・取り込ませる先は、主に肝臓、筋肉、脂肪細胞である
・細胞に取り込まれたブドウ糖は、細胞を動かすエネルギー源として使用されたり、脂肪やグリコーゲンに変換され貯蔵エネルギーとして蓄えられる
(3)血糖値が下がってくるとどうなる
・空腹になり血糖値が低下してくると、膵臓のランゲルハンス島のα細胞からグルカゴンなどのインスリン拮抗ホルモンが分泌される。これにより、肝臓に貯蔵されたグリコーゲンがブドウ糖に分解され、血液中に供給されることで血糖値が上昇する
・血糖値を上昇させるホルモンと低下させるホルモンがその時の状況によって増加したり減少したりすることで、血糖値は常に一定に保たれている
インスリンの分泌がなくなるとどうなる
・インスリンの分泌がなくなると、細胞に糖を取り込めなくなり、糖をエネルギーとして使うことができなくなる
・1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が何らかの原因で障害され「インスリンが全く出なくなる」こと、つまりは高度なインスリン分泌障害によって、高血糖になる疾患
・必要量のインスリンを投与しなければ生存できない状態をインスリン依存状態という。1型糖尿病の多くがこの状態である
(1)糖尿病患者の状態
・1型糖尿病は多くはインスリン依存状態
・2型糖尿病は多くはインスリン非依存状態
・インスリン依存状態ではインスリン療法が必要
高血糖の症状
・脱水、口喝、多飲、多尿
・糖尿病の患者は、血糖値の高い血液を薄めようと細胞質から水分が移動することで脱水状態となる。これにより、喉が渇き水をたくさん飲むようになり、尿量が増える 根拠:血液のブドウ糖濃度が濃く、血管の中つまり血液と、血管の外つまり細胞質で、ブドウ糖濃度に差が生じてここに浸透圧が生じて、血液が細胞質から水分を引っ張り、ブドウ糖濃度を薄めようとする。これを、血漿浸透圧の上昇という
インスリン注射
・インスリン注射は1日原則4回 根拠:インスリン分泌の追加分泌の代わりに3回、基礎分泌の代わりに1回の計4回
(1)インスリン療法
・インスリン療法では人工的に作られたインスリン製剤を使用する
・ペン型の注射器を使うのが一般的
※インスリン製剤は大きく分けて
①主に追加分泌の代わりをするもの
②主に基礎分泌の代わりをするもの
③2つの作用の混合型がある
※インスリン療法を行う際の生活上の注意点
・ストレスや風邪などの感染症、外傷などがあると血糖コントロールが難しくなる
・自己判断でインスリンを中断してはならない
(2)4回法の例
①前夜の夜:寝る前に特効型溶解1回
②朝食:超速効型
③昼食:超速効型
④夕食:超速効型
②③④の3食で超速効型3回
(3)代表的なインスリン製剤の特徴
①超速効型
・注射後10~20分で作用が発現するため、朝食前の投与が可能
・作用持続時間が短く、次の食前の低血糖をきたしにくい
②速効型
・注射後30分~1時間で作用が発現するので、食前(30分前)に投与する必要がある
・唯一、静脈注射が可能
③中間型
・作用が18~24時間程度持続するとされている
④特効型溶解
・安定的な作用が1日にわたって持続する
・空腹時血糖値の上昇を抑える
⑤混合型
・超速効型または速効型と中間型をさまざまな比率で混合したもの
(4)インスリン自己注射
・注射は基本的に皮下注射
・インスリンを皮下注射ではなく筋肉内注射をすると、インスリンの吸収が速くなり、効きすぎる危険がある
・注射部位は腹壁 根拠:吸収が最も安定しているため
・毎回2㎝程部位を変更しながら注射する 根拠:同部位への注射を繰り返すと、その部位の脂肪組織が萎縮したり、硬くなるなど硬結してしまうため
・注射後、部位を揉まない 根拠:揉むことでインスリンがすぐ血管に入り、血糖値が急激に下がるため
・注射部位によって吸収速度が違う 吸収速度は腹壁>上腕>殿部>大腿の順に速い
血糖自己測定
・簡易血糖測定器を使用し患者自身が血糖値を測る 根拠:患者が自分の血糖コントロール状況を把握し、セルフケア意欲を高めるため
・簡易血糖測定器は、手の指の先や手のひら、耳たぶの毛細血管などに採決穿刺器具をつけボタンを押すと針が出て少量の血が出る。この血をセンサーや試験紙につけて測定する
低血糖時
・空腹時血糖値は正常60~100mg/dⅬ
・60mg/dⅬ未満の低血糖状態になると、冷や汗や震え、動悸などを引き起こす 根拠:インスリン拮抗ホルモンが分泌され、特にカテコールアミン(アドレナリンなど)が交感神経を刺激するため
・血糖値が45mg/dⅬまで低下すると頭痛、眼のかすみなどの症状が出現する 根拠:中枢神経細胞の代謝が低下するため
・血糖値が30mg/dⅬを下回ると、けいれんや昏睡がみられはじめる
・高血糖時よりも低血糖時のほうが危険 根拠:低血糖性昏睡が長引くと脳に不可逆的な障害が生じ、最悪の場合死に至る
(1)低血糖時の処置
・ブドウ糖(グルコース)の静脈注射を実施することが多い 根拠:より吸収の速い単糖類=ブドウ糖
・低血糖を予防したいときなど、効果を長続きさせたいときは、二糖類の砂糖や多糖類のビスケットなど分解・吸収に時間がかかるのものを経口摂取する 根拠:ブドウ糖は速く効く代わりにすぐに吸収されなくなってしまうため
実習の受け持ち患者さんで、血糖測定やインスリン自己注射をしている方も多いと思います。
ぜひ、この記事を活かして下さい。
では、また!!
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