今回のテーマは『肺がん』。事前学習で書くことが無いくらいの疾患です。教科書を開かなくても、スマホがあれば事前学習が書けるよう、根拠を交えながらまとめました。是非、事前学習に活かして下さい。。
では、いきましょう!!『肺がん』
肺がんの症状
①肺がんの可能性を疑う症状
・咳、痰、血痰
・嗄声 根拠:肺がんによって大動脈下リンパ節が腫大し、左反回神経に浸潤することで嗄声が起こる
②肺がんのリスクファクター
・年齢(50歳以上、特に60~70歳代に多い)
・喫煙歴(ブリンクマン指数400以上)👈リンク
ブリンクマン指数による評価
喫煙指数:400以上 分類:肺がん危険群
喫煙指数:600以上 分類:肺がん高度危険群
喫煙指数:1200以上 分類:喉頭がん高度危険群
・肺がん患者の80~85%が喫煙者であり、喫煙者は非喫煙者より男性で4.4倍、女性で2.8倍肺がんになる危険率が高くなる
肺がんを疑う際の検査
・胸部エックス線写真
・胸部CT撮影
・喀痰細胞診
①胸部エックス線写真
・胸部エックス線写真で、無気肺があると腫瘤影は目立たなくなることも多いが、腫瘤状の陰影がある場合は、特にがんの可能性が高い
②胸部CT画像
・CTでは、小さな陰影や淡い陰影の肺がん、また心臓や横隔膜に隠れて見えない肺がんを見つけることができる
③喀痰細胞診
・喀痰細胞診とは、痰を顕微鏡で調べて、痰の中にこぼれた肺の細胞が良性か悪性かを診る検査
・検査の結果は陰性・疑陽性・陽性の三段階に分類され、悪性腫瘍の細胞を認めるものを陽性、悪性腫瘍の疑われる異型細胞を認めるものを疑陽性、いずれも認めないものを陰性とする
確定診断のための気管支鏡検査
①気管支鏡検査とは
・気管支鏡検査とは気管支の中に内視鏡を入れ、肺の内部を診る検査
・メリットとして、病変を目視でき確認できる、また組織を採取し調べることができる
・デメリットとして、呼吸が困難になる可能性や、検査中の咳、声を出すことも困難になるため、患者にとって負担が大きい検査である 根拠:検査中左右の声帯の間を内視鏡が通り、声帯を閉じることができなくなるため、患者は声を出せなくなる
・気管支鏡検査は、外来でも可能な検査であるが、組織を採取する生検を実施する場合は、出血、気胸のリスクがあるため、入院しての実施が安全である
②気管支鏡検査の看護(国試)
・患者は検査中声を出せなくなるため、検査前にあらかじめ「苦しい」「大丈夫」などの合図(手で台を叩く、片手を上げる等)を決めておく
・検査当日は朝から禁飲食 根拠:内視鏡挿入時には局所麻酔を用いるため、その副作用で悪心・嘔吐が出現する可能性また、誤嚥のリスクが高まるため
・検査後も局所麻酔の効果が消失するまでの検査後2時間程度は禁飲食とし、飲食を開始する際はまず水を少量飲んでもらい、むせ込みが無いか確認してから開始する
・生検(経気管支肺生検)を実施した場合、組織の摂取部からの出血による血痰が出たり、胸膜を損傷して気胸を生じる可能性があるため、患者にあらかじめ説明しておく
胸腔穿刺
胸腔穿刺とは肺がんに限らず胸水が貯留している場合や、気胸の際に実施する
・胸水は、胸腔に溜まる液体で、正常でも数ml存在するが、がんが細菌感染による胸膜炎や心不全などで異常に多く溜まることがあり、胸腔穿刺で採取して、診断材料にする
①胸腔穿刺方法
・胸腔穿刺方法は座位か半坐位で局所麻酔、胸部エックス線や超音波検査で貯留部位を確認して穿刺する
②胸腔穿刺の注意点
(1)体位は座位か半坐位 根拠:座位か半坐位になることで貯留している胸水が重力で肺の下に溜まるようになるため
(2)局所麻酔で行う
(3)胸部エックス線や超音波検査で貯留部位を確認して穿刺する
(4)合併症として気胸や血胸がある
・気胸とは、胸腔に空気が溜まり肺が膨らむことができなくなった状態 根拠:気胸では胸腔に空気が入り込むことで、胸腔内圧が大気圧と等しくなり(陰圧で無くなるということ)肺が縮んでしまう(虚脱)ため
・肺に穴が空いて空気が漏れ出して起こるのが内気性気胸
・胸腔が外側から障害されて起こるのが外気性気胸(国試)
・気胸では、患側(気胸になっている側)の呼吸音が減弱するため、呼吸音の左右差がみられるのが特徴
(5)穿刺中は患者は深呼吸禁止(国試) 根拠:胸腔穿刺を行う際は、深く呼吸すると肺が広がり針刺しのリスクが高まるため
(6)検査後1時間は安静とし定期的にバイタルサインと呼吸状態を確認する
③気胸への対処
・症状が軽ければ安静
・肺の虚脱が一定以上ある場合は、胸腔穿刺による緊急脱気や胸腔ドレナージを実施する
(1)胸腔穿刺(緊急脱気)
・胸腔ドレナージがすぐに実施できない場合に緊急処置として行う 根拠:胸腔にドレーンを挿入し脱気して肺を再膨張させるため
・脱気を実施する際の体位は、側臥位や仰臥位にすることで空気が出しやすい 根拠:背中側には空気が溜まりにくいため
肺がんの組織型
①4つの組織型
・原発性肺がんは、主として4つの組織型 腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がん がある
・治療上では、小細胞がんと非小細胞がんで区別する
②非小細胞がん
・非小細胞がんは、早期であれば、がん細胞が肺のその場だけで留まっていることが多い
・肺の手術でがんを取りきれる可能性が高い
(1)治療法
・早期がんは手術療法が中心
・進行がんは放射線療法、化学療法
③小細胞がん
・小細胞がんは転移の可能性が高い
・肺に小細胞がんが見つかった時は、すでに他の臓器に検査では見つけられないほどの小さな転移がんができていることが多い
(1)治療法
・化学療法が中心(腫瘍の範囲が限局している場合は放射線療法を併用)
・小細胞がんは、非小細胞がんよりも抗がん剤が効きやすいとされている(国試)
肺がんの症状出現の差
・肺がんは症状が出たときにはすでに進行していることが多い
・小細胞がんや扁平上皮がんは比較的、咳嗽・喀痰・血痰などの症状が出現しやすい 根拠:小細胞がんや扁平上皮がんは肺門型といって気管支付近にできやすく、腫瘍によって気道が狭窄したり閉塞することで症状が出現しやすいため
・腺がんや大細胞がんは症状が出現しにくい 根拠:腺がんや大細胞がんは肺野型といい、気管支から遠い肺の端の方にできやすく、そおのために症状が出現しにくい
腫瘍マーカー
・腫瘍マーカーとは腫瘍全体が生産する、または腫瘍に反応して生体内で産生され、濃度が上昇する物質のこと
・診断の他に、治療効果や経過観察にも利用される
肺がんについてのまとめ
①小細胞がん
・好発部位 肺門型
・症状 早期から咳嗽・喀痰・血痰
・腫瘍マーカー NSE、Pro-GRP
・治療 化学療法が中心(限局していれば放射線療法を併用)
・疫学 肺がん全体の15~20%
⓶非小細胞がん
(1)扁平上皮がん
・好発部位 肺門型
・症状 早期から咳嗽・喀痰・血痰
・腫瘍マーカー S㏄抗原、CYFRA、CEA
・治療 遠隔転移のない場合、手術療法が中心 遠隔転移がみられる場合は、化学療法(または放射線療法を併用)
・疫学 肺がん全体の80~85%
(2)腺がん・大細胞がん
・好発部位 肺野型
・症状 現れにくい
・腫瘍マーカー CEA、SLX
・治療 遠隔転移のない場合、手術療法が中心 遠隔転移がみられる場合は、化学療法(または放射線療法を併用)
・疫学 肺がん全体の80~85%
抗がん薬と副作用
①小細胞がんを治療する抗がん薬
・シスプラチン、カルボプラチンなどのプラチナ製剤に、イリノテカン塩酸塩(CPT-11)やエトポシド(VP-16)を組み合わせた2剤併用が中心
⓶非小細胞がんを治療する抗がん薬
・早期がんであれば手術療法を行い、進行がんに対してはシスプラチンやカルボプラチンとほかの抗がん薬(イリノテカン塩酸塩、ビノレルビン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドセタキセル等)を併用した化学療法等が用いられる
・非小細胞がん(特に腺がん)では、正常細胞への影響が少ない分子標的薬である、ゲフィチニブ(イレッサ🄬)やエルロチニブ(タルセバ🄬)も用いられる
③シスプラチンとカルボプラチン
・シスプラチン、カルボプラチンは白金(プラチナ)をもとにしたプラチナ製剤で、肺がん化学療法の中心的な治療薬
④プラチナ製剤の副作用
・急性尿細管壊死(ATN)が最も重要であるため、尿量減少等が起こっていないか注意する
・耳の障害(聴力低下、難聴、耳鳴)、強度の悪心もプラチナ製剤に特徴的な副作用
・その他、抗がん薬に共通の副作用として、骨髄抑制(汎血球減少)、脱毛、嘔吐、下痢等もみられる
⑤副作用への対応
・化学療法を行う際には、大量の輸液を投与し尿量を増やし、抗がん剤が長らくからだの中心に留まらないようにしたり、制吐剤(セロトニン拮抗薬)を投与する
放射線療法
・放射線療法とは、肺がんを狙って皮膚の上から放射線を当てる
・放射線を受けた範囲にのみ効果がある 根拠:化学療法と違い局所療法であるため
①肺がんの放射線療法の有害事象
(1)急性有害事象(治療開始から90日以内に起こり治療の中止により改善する)
・放射性皮膚炎、放射性食道炎、宿酔、(倦怠感、食欲不振、嘔吐、微熱など)等
(2)晩期性有害事象(治療開始から90日以降に起こり、数か月または年単位の時間を経過して出現、不可逆性で難治性であることが多い)
・放射性肺臓炎(間質性肺炎)(国試)、二次がん等
・放射性肺臓炎は軽症なら経過観察とするが、呼吸困難が進行する場合は副腎皮質ステロイドを用いる
・症状が無いこともあるが、咳や発熱、息切ねどの症状があれば注意が必要
手術療法
・肺は右肺が3つ(上葉・中葉・下葉) 左肺が2つ(上葉・下葉)の肺葉に分かれている 👈リンク
・がんのある肺葉を切り取って取り除く手術を肺葉切除術という。肺がんで最も多く行われる。
・早期の肺がんに対しては胸腔鏡下手術(VATS)も選択の1つ
・肺葉切除術に加え、肺門と縦隔のリンパ節郭清がある
・肺の手術では、肺だけでなく呼吸運動に関わる筋肉や肋骨も切断するため、術後には疼痛が強く、咳がしにくくなり痰の貯留が増える
・肺の手術の合併症には、無気肺、不整脈、皮下気腫がなどがある
・痰の貯留により、無気肺のリスクが高くなる
・無気肺の予防や肺機能の早期回復のため、術前からインセンティブスパイロメトリなどの器具を用いた呼吸訓練や、排痰の練習を行こなう
今回は肺がんについてでした。
では、また!!!!
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